怒鳴るということ

民度の低い話だが、私は画用紙に「怒鳴らない」とでっかく書いた紙をリビングに貼り付けている。怒鳴ってばかりの自分を顧みて改めようと思ったからである。

自分の性格を分析してみると、熱しやすくも冷めやすく好き嫌いがハッキリしているタイプ、結婚するまでは仕事以外で人に怒ったことなんてほとんどなかったし怒るようなこと出来事もなかった。

それが結婚してからはどうだろう。いや、子供が産まれる前まではお互い仕事で生活サイクルも合わず、ほとんど顔を合わせることもなかったので喧嘩にすらならなかった。

1人目が産まれてからも、最初の2ヶ月こそ闇モード全開だったが「私って適当野郎だったじゃん…?」と突然自我が目を覚ましてからは家事育児も適当にコネコネして、育休って毎日ゴロリンチョ出来て最高じゃね???とU-NEXTをこれでもかってぐらい楽しみ、近所の美味しいお店を調べては行ってみたりと娘を連れまわし自由気ままな生活を送っていた。

さあ、ここからが問題の2人目だ。妊娠しながらの1人目育児は育休中だったこともあり、大した悩みもなく平々凡々と暮らし出産に漕ぎ着けた。2人目は放っておいてもよく寝るしご機嫌なことも多いし、懸念していた1人目の赤ちゃん返りもなくまあまあ順調だったのではないだろうか。

しかし、2人目が二足歩行するようになってから事態は一変した。二足歩行したその日から私の口癖は「ちょっと待って」になったかも知れない。キムタクばりに「ちょ?!ちょ!!ちょ〜〜〜〜!!!」と「ちょ」だけで感情表現をするようになってしまった。子供達は日々成長しているというのに、親は退化していくばかりである。

子供達の一挙一動が怪我や病気に喧嘩などに繋がるのを見越して事前に防ぎたい親と、なんでも試してガッテンの子供達の相性の悪さといったらない。親と子供達の攻防戦を繰り広げる一方で家の中は散らかり荒れ果てる。永遠に終わらない家事、体力爆発ぶつかり稽古ばかりする子供達、疲労困憊死にかけの親。

もうね、イライラしないなんてあり得ない。一度怒鳴ってしまうと歯止めも効かなくなり声は大きくなる一方で、子供達は大人しくなるけど効果も一瞬。そんな負のサイクルをずーっとグルグルしてた。もう怒鳴りたくもないし、なによりイライラしながら生活している自分に心底嫌気がさして、ある日1日だけ「今日は怒鳴らない」と決めて過ごしてみた。

するとどうだろう、たった1日、されど1日、子供達の変化は明白で、これを数日続けることで子供達も比較的丸くなってきたような気がする。怒られたから泣きながらやるのではなく、褒められたり喜ばれたいからやるといったほうがしっかりくるような行動をするようになった。

他の家庭では当たり前のことでしょ?と言われたらそれまでだが、私にとっては新たな気付きだった。自分を失っていた自分が、自分自身で気付き、実践し、行動まで動かせた。

子供達には悲しい思い、辛い思いをたくさんさせてしまっただろうか。一方的に怒ればいいと思い込んで当たり散らしていた自分の反省すべきところである。

後悔しても傷付いた子供達の心は戻らない。同じ過ちを繰り返さないために、我が家のリビングには今日もまた「怒鳴らない」と掲げているのである。